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なぜイラン人の裁判に、初適用なのか

東京地裁における、とある重罪事件の裁判で、あっと驚くほど素早い判決が出ました。きょう(2006年2月9日)の全国紙朝刊は、いずれも社会面でこの出来事を取り上げています。

記事を読むと、初公判から13日目に判決を出すという、類のないほど短期間な審理だったことはよくわかります。しかし、おそらく多くの読者が頭に浮かべるであろう疑問に、どの新聞も答えていないのが気になります。

今回の裁判は、通常のものとは異なり、〈迅速で分かりやすい裁判のため、初公判前に証拠や争点を絞り込む〉(毎日)という作業がありました。「公判前整理手続き」と呼ばれるもので、東京地裁でこの手続きを適用したのは、これが初めてだったようです。

裁判をスピーディーに終了できるというメリットがある反面、特に被告にとってはマイナスとなる点があるようです。今回の裁判について被告弁護人は、〈「時間が足りない」〉(読売)、〈「我々の主張をもう少し時間をかけて検討してほしかった」〉(朝日)、〈連日開廷では時間的に検討が十分出来ず、非億のためになるかは疑問だ〉(毎日)などと話しています。

そうしたデメリットも考慮してのことでしょう、この「公判前整理手続き」は昨年11月に導入されたのですが、それ以降の裁判すべてに適用されているわけではありません。

では、今回のケースは他のと何か違いがあるのかというと、一つ大きな特徴があります。被告がイラン人で、この被告に刃物で切りつけられたとされる被害者もイラン人という「外国人裁判」なのです。

東京地裁に数多くある刑事裁判のなかで、なぜこの裁判が選ばれたのか。読者としては、非常に気になるところではないでしょうか。もしや、ガイジンは日本人に比べ裁判の進行についてとやかく言う確率は低いだろうと判断し、新しい手続きの初適用にはちょうどいいと考えたのではないかとも想像できます。もしかしたら、そんな意図はまったくなく、機械的に選出しただけなのかもしれません。ただ、3紙が3紙とも、理由についてはまったく何も書いていないとなると、何かウラがあるんじゃないかと勘ぐりたくもなります。

なぜ東京地裁での初適用がこの特徴ある事件だったのかということは、記者だって当然疑問に思ったでしょうし、その点について尋ねてもいるはずです。記者は担当者から説明を聞いて納得したのかもしれませんが、読者はちっともわかりません。自分が疑問に思ったことは読者も疑問に思うだろうと考え、仕入れた情報をちゃんと読者にも伝えるべきです。

これはあまり考えたくはありませんが、イラン人の事件が選ばれたことに対して、単に関心をまったく寄せなかった結果、今回のような記事になったのかもしれません。もしそうだとしたら、その記者は、読者に対して劣悪なサービスしか提供できていないことを自覚すべきだと思います。
by tmreij | 2006-02-09 23:51 | 本紙


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