人気ブログランキング | 話題のタグを見る

サラ金の「違法金利」には、新聞も加担している(1)

消費者金融(いわゆるサラ金)などの貸金業者が、法律の定めを超えた利息を取ることを、最高裁が実質的に否定しました。きょう(2006年1月14日)の朝日、毎日両紙朝刊は1面トップで、読売朝刊は第2社会面で、この判決を大きく報じています。

〈借りて保護、鮮明に〉(朝日)、〈業界全体に重大な影響〉(毎日)といった見出しが示すとおり、借金をしている人やこれからする人には、負担が大きく減る画期的な判断ですし、貸金業者には現在の商慣行の見直しを迫るものです。

と同時に、新聞にとっても、深刻に受け止めなければならない判決であるはずです。

まず始めに、貸金業の利息についてざっくりと説明します。

金を貸すときの利息については、その名もずばり「利息制限法」という法律があります。この法律で、年利(1年の利息)は15%から20%まで(借りた額によって違う)と規定されています。

それなのに、消費者金融や商工ローンなどの業者は、25%とか27%とかいった年利を徴収してきました。これは、利息について定めた法律が別にもう1つあり、貸金業者はそちらの法律——「出資法」=年利の最高は29.2%と規定——を利息の上限とみなしているからです。

貸金業者が高い金利を取っていることについては、「利息制限法違反で、借り手を非常に苦しめている」として以前から問題視する声がありました。しかし、業界について定めた「貸金業規制法」という法律が、借金人と「特約」を交わしてさえいれば、利息制限法は無視して、出資法の上限金利である29.2%まで利息を取れると規定。貸金業界は、これをタテに批判をかわし、借金苦に悩む人々から高利をむさぼってきたわけです(「特約」というと大げさな感じがしますが、消費者金融で借金をするとほぼ必ずつけられます)。

さて、お気づきの方も多いと思いますが、主要な新聞には、消費者金融の広告がひんぱんに掲載されています。ニッコリ笑う制服姿の女性や、黒目がちで小さな犬などの写真とともに気軽な借金を呼びかける広告は、スポーツ面などに小さく載っている場合もあれば、複数の業者で全面を埋めていることもあります。銀行と消費者金融の提携が深まってからは、広告量はいっそう増えた印象です。

広告には、社名や電話番号、ウェブアドレスなどとともに、とりわけ小さな活字で貸し出しの条件が書かれています。貸金大手4社すべての広告が出ている1月10日付朝日新聞朝刊のスポーツ面から、この4社の利息に関する記述を取り出してみましょう。

アイフル〈お利息12.775%〜28.835%(実質年率)〉
プロミス〈お利息13.50%〜25.55%(実質年率)〉
アコム〈貸付利率(実質年率)/13.14%〜27.375%〉
武富士〈お利息(実質年率)/13.5%〜27.375%〉

このように、全社の広告で、利息制限法の上限を超えた利息が明記されています。これは別に朝日に出ている広告に限ったことではなく、どの新聞の広告も同じです。法律違反で、借金地獄の元凶だとの批判があるなか、15〜20%を超える年利について、新聞はじゃんじゃん広告を載せ、容認するばかりでなくお墨付きを与えてきたのです。

なぜお墨付きを与えることになるかというと、新聞は各社、公序良俗に反することのないよう、広告について掲載基準を設けています。ですから、新聞に広告が出るということは、その内容について新聞が公正だと認めたことを示しています。また、こうした理屈抜きに、新聞に出ているものは広告も含めて、間違いのないものだと思い込んでいる人は多いでしょう。「新聞に出てるぐらいだから、利息に問題はないのだろう」と考える人もいると思います。

そうした、新聞がOKを出してきた広告の最高利息を、今回の最高裁判決は認めませんでした。別の角度から言えば、新聞は、法律的に問題ありと判断された内容の広告を、長い間出し続けてきたのです。

新聞社は、こうしたことについて、どう考えていたのでしょうか。このブログの筆者は2年ほど前に、消費者金融の広告掲載について、全国紙に取材したことがあります。

(あすに続く)

 ———

読売はきょうから、朝刊社会面で、〈問い直す 宮崎事件〉という連載を始めました。1回目は、〈起訴 一転 妄言奇行〉〈死刑逃れの詐病?〉という大見出しが踊っています。

記事では、捜査に当たった警察官2人(うち1人は現役)を登場させ、〈「精神病ではない」〉〈「死刑になりそうだと知り、詐病を始めたのか」と感じた〉などの発言を引いて、責任能力はあったという主張を長々と展開しています。

その一方、精神疾患があったとの見方もあることについて触れているのは、〈公判では、「心神耗弱で責任能力が減退していた」とする鑑定意見も出されたが、97年の東京地裁判決は保崎鑑定を採用して死刑を選択」〉という部分だけです。

このブログの筆者は、2日前の原稿「宮崎被告の死刑を警察と一体となって望むとは」で、〈読売には、「権力の犬」という呼び名を贈りたいと思います〉と書きました。きょうの読売の記事を読み、大変失礼な表現だったと反省しています。犬に謝りたいと思います。
by tmreij | 2006-01-14 23:27 | 本紙


<< サラ金の「違法金利」には、新聞... 訂正を出せる新聞が、信頼に値する >>