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住宅公社の「悪徳」さを追求してよ

賃貸住宅の床や壁につく通常の汚れや傷みについては、貸主がクリーニング代を負担すべきだと、最高裁が判断しました。きょう(2005年12月16日)の全国紙夕刊は、この判決を大きく取り上げています。

今回の訴訟では、貸主(大阪府住宅供給公社)と借り主(30代男性)の間で、通常の汚れなどについては借り主が負担するとの特別契約がありました。しかし最高裁は、この特約の中身が明確ではなく、両者に合意は無かったと判断しました。

朝日が1面トップで、〈退去時に敷金の返還をめぐってトラブルになるケースは多い。通常の傷や汚れは家賃に含まれるという原則があるのに、今回のような特約がある例は依然としてあり、これを厳格に解釈した最高裁判決の影響は大きい〉と書いているように、この判決は、賃貸住宅に住む多くの人々にとって、意味のあるものだといえるでしょう。

読売も1面と社会面で、〈判決は、貸主がどのような説明をし、入居者がどんな意思表示をすれば合意があったと見なせるかを最高裁が初めて示したもので、トラブルの解決に役立ちそうだ〉〈十分な説明と同意に基づく賃貸契約を促す契機になりそうだ〉と解説しています。

と、この点はいいのですが、どの新聞を読んでも食い足りなさを感じます。それは、〈国土交通省のガイドラインでは、「通常の使用による損耗などの修繕費用は賃料に含まれる」とある〉(朝日)のに、なぜ貸主がクリーニング代を借り主に求めてきたのかが、わからないからです。

毎日が書いている、〈国土交通省のガイドラインやモデル契約書は、通常損耗の修繕費用は家主側が負担するとしているが、法的拘束力がない〉というのが、大きな理由であろうことは想像できます。拘束力も罰則もないのだから、ガイドラインなんか気にしないで、取れる金はどんどん取っちゃえ、という発想です。

これは、貸主が悪徳業者やガリガリ亡者であれば、すんなり理解できます。しかし、今回の訴訟の貸主は、大阪府住宅供給公社という公営企業です。利潤追求よりも、低い負担で快適な生活を送ってもらうことに力を注ぐのが、住宅供給公社の本来の仕事でしょう。その公社が、賃貸契約の標準といえるガイドラインに逆らい、居住者に多額の負担を強いるような特約をつけているのです。

公社はいったい、どんな考えで特約をつけているのでしょうか。

朝日の記事では、〈公社側は「契約自由の原則があるので特約は有効」などと反論していた〉とありますが、この言い分について、公社の役割という観点から、新聞はしっかりと追求すべきです。そして、他地域の公社についても、居住者に「非原則的な」負担を求めていないかをチェックしてほしいと思います。
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by tmreij | 2005-12-16 23:56 | 本紙

誤発注に乗じたのか、不作為だったのか

みずほ証券が株を誤発注し、それを他の証券会社が大量に買って大きな利益を得ました。きょう(2005年12月15日)の全国紙朝刊は、複数の証券会社がその利益の返還を検討していると、1面や経済面などで報じています。

この騒動をめぐっては、朝日が書いているとおり、与謝野経済財政・金融担当相が〈「誤発注と認識しながら、その間隙をぬって株を取得するというのは美しい話ではない」〉と、利益を得た証券会社を非難しています。一国会議員ではなく所管の大臣がこう言っているわけですから、政府としてそう認識しているわけです。

これはかなり強烈なことです。一国の政府が大手証券会社に向かって、「美しい話ではない=汚い」ことをしていると非難しているわけで、そうそうあることではありません。後ろ指を指された企業は、信用を大きく損ないますし、もし批判が不当であれば、名誉棄損で国を訴えることも辞さないでしょう。

そんな注目すべきクレームなのに、どの新聞も、果たして証券会社が〈「誤発注と認識しながら、その間隙をぬって株を取得」〉したのかどうかについては、さほど熱心には掘り下げていません。

今回の株取引や利益返還に関する証券会社側のコメントをきょうの新聞で探してみると——▽リーマン・ブラザーズ証券〈「単純なミスに乗じて、利益を得るべきではないと考えている」〉(朝日)、〈「誤発注に乗じて利益を得るのは本意ではない」〉(読売)▽日興コーディアルグループ〈「当社の利益にするつもりはなく、市場の信頼回復に役立たせたい」〉(朝日)——ぐらいしか見当たりません。

これから判断すると、リーマンは誤発注に乗じたらしいことはわかります。しかし、日興コーディアルを含め、他に大量取得した社(UBS証券グループ、モルガン・スタンレー、クレディ・スイス、野村証券)については、自民党が〈「火事場泥棒」〉(毎日、読売)と呼ぶようなことをしたのかどうなのか、不明です。

朝日は、〈「急激な売り注文が出た銘柄などを自動検知するシステムがあり、ディーラーは誤発注の事情を知らないで買い注文を出した」〉という企業側のコメントを載せていますが、誰が言ったのかについては〈金融機関〉とぼかしています。これでは、責任あるコメントとは言えませんし、どこの社の発言なのかがわからなければ、あまり読者のためになる情報とも言えないでしょう。

今回の誤発注に端を発した株の大量取得と、その後の現金決済による大もうけについては、多くの人々が「証券会社ってヒドくない?」という感想をもっているように思います。違法行為ではありませんし、ミスをしたのはみずほ証券や東京証券取引所ですから、そちらの責任や対応を報じるのはもちろん大事でしょう。しかし、ボロ儲けした大手証券会社がどんなつもりで商売しているのかということも、読者にとっては重要な情報のはずで、新聞はそこもしっかり伝えてほしいと思います。
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by tmreij | 2005-12-15 23:39 | 本紙

製薬会社の宣伝部隊か

飲む発毛薬「プロペシア」が、日本で発売されることになりました。きょう(2005年12月14日)の全国紙朝刊は、目立つ扱いでこれを報じています。

なんでも、発毛剤としては世界で唯一の飲み薬(医療用医薬品)とのこと。朝日の経済面記事によると、万有製薬(発売元)は〈「(薄毛と思っている日本人男性は)欧米に比べ非常に多く、日本の市場は世界最大では」〉と話しているそうです。こうしたことから、今回の発売を新聞がニュースとして取り上げること自体は、自然なことだと思います。

問題は、その報じ方です。

読売の社会面記事〈世界唯一 飲む発毛剤 きょう発売〉〈毎日1錠 月7500円〉は、〈脱毛を促す男性ホルモンをつくる酵素の働きを防ぐ〉〈世界60カ国以上で年間約300億円の販売実績がある〉〈1錠250円(参考価格)で、毎日1錠ずつ服用〉といったデータを列挙。〈発表会では、国内の男性を対象に臨床試験を行った東京女子医大の川島真教授が「副作用も少なく、58%の患者の髪の毛が増えるなど、効果が確認された」と報告した〉という文章で結んでいます。

社会面記事なのに、社会的な位置づけや、批判精神といったものはまったく見当たりません。もう、ほとんど広告です。

新聞に、新発売の医薬品について紹介する記事があってもいいでしょう。しかし、製薬会社の発表をただまとめるだけでは、新聞として機能しているとは言えません(製薬会社は大喜びでしょうけど)。読者にしてみれば、それでなくても多くの広告を見せつけられているのに、記事の部分でまたさらに宣伝を読まされるようなものです。

副作用の無い薬は無いといわれていますが、この読売の記事で副作用について触れているのは、上記の〈「副作用も少なく……」〉というコメントだけ。しかも、記事から判断すると、このコメントをした医大教授は、製薬会社から依頼を受けた人物のようなのです。信用度に問題ありといえるでしょうが、百歩譲って、この教授の言うことを額面どおりに受け止めたとしても、副作用は少ないながらもあるわけですから、その副作用についてしっかり取材し、きっちり書くのが読者サービスというものでしょう。

その点、朝日の記事は、〈1年間の臨床試験で58%の被験者で髪の毛が増えた一方、性機能障害などの副作用が5%の人に出た〉と、わずかではありますが、副作用について具体的に触れています。医薬品の紹介記事では、欠かせないデータでしょう。また、記事全体としても、単に商品を紹介するのではなく、「リアップ」以降は苦戦しているという発毛剤業界の現状とからめてまとめている点で、評価できます。

読売は、製薬会社を喜ばせようと思って今回の記事を書いたわけではないでしょう。もちろん、そんな気づかいはすべきではありませんが、有益な情報で読者を喜ばせようという意識は、ぜひとももってもらいたいと思います。
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by tmreij | 2005-12-14 22:53 | 本紙

「手術ミス」と断定する根拠を示すべきだ

東京女子医大病院で心臓手術を受けた小学生が死亡し、医師が業務上過失致死罪に問われた裁判で、一審の無罪判決を不服として、検察が控訴しました。きょう(2005年12月13日)の朝日新聞朝刊は第3社会面で、〈心臓手術ミス事件 東京地検が控訴〉という見出しで、ごく簡単にこのことを伝えています。

この日の記事もそうなのですが、一審の東京地裁判決を報じた記事(12月1日付朝刊)でも、朝日は他の全国紙とは違う点があります。それは、小学生の死亡を〈手術ミス〉と位置づけていることです。

きょうの記事は、〈東京女子医科大病院の心臓手術ミス事件で……〉と始まっていますし、1日の記事の書き出しも、〈東京女子医科大病院(東京都新宿区)で群馬県高崎市の小学6年、平柳明香さん(当時12)が心臓手術のミスで死亡した事故で……〉となっています。小学生が死亡したのは手術ミスが原因だったと、断定しているわけです。

実際、医療過誤(ミス)は全国でしょっちゅう起きています。手術で子どもが死ぬこともありますし、子を失った両親のやり切れ無い思いや憤りは、とてつもなく大きいでしょう。一般市民に比べ圧倒的な専門知識をもつ大病院の医師は、患者(の親族)から見れば「権威」で「強者」です。また、情報開示については、医療機関は一般的に遅れているといえるでしょう。

こうした状況を考えれば、新聞が遺族側に立ち、医師がミスをしたと断じたくなる気持ちは理解できます。

しかし一審判決は、人口心肺装置に欠陥があり、それが死亡につながったと認定しましたが、医師に落ち度があったとは結論づけませんでした。この判決から判断すれば、〈手術ミス〉で小学生が死亡したという朝日の断定は、行き過ぎと言わざるを得ないように思います。

ちなみに、他紙のきょうの記事には、朝日のような位置づけは見当たりません。毎日は〈東京女子医大病院で01年、群馬県高崎市の小学6年生、平柳明香さん(当時12歳)が心臓手術の際に死亡し、同病院元助手の佐藤一樹被告(42)が業務上過失致死罪に問われた事故で……〉、読売は〈東京女子医大病院で2001年、心臓手術を受けた平柳明香さん(当時12歳)が死亡した事件で……〉と始まっていて、ともに「ミス」だったとは決めつけていません。このことは、1日の判決記事でも同じです。

朝日は、確固とした理由があって、〈手術ミス〉という言葉を繰り返しているのかもしれません。それならそれでよいのですが、その場合は、読者にきちんと理由を説明すべきです。

もし、心情的な理由で〈手術ミス〉とし続けているのであれば、やはり問題だと思います。被害者、弱者といった立場の人々の気持ちをおもんばかることは新聞として大事ですが、それよりもさらに、事実に忠実であることの方が大切なはずです。

今回の小学生の死亡については、当事者間の説明に食い違いがあるため、裁判で事実認定されたことを事実とみなすしかありません。そして、事実の前では、必要であれば心を鬼にしてでも、その事実に基づいて記事を書くべきです。

仮に朝日が、裁判で認定されたこと以外のことを事実とみていて、それゆえ〈手術ミス〉と書き続けているのであれば、その内容と根拠をはっきりと読者に示す必要があります。
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by tmreij | 2005-12-13 23:57 | 本紙

警察の「お手上げ」宣言に、ひと言もなし?

東京・世田谷の会社員一家殺害事件の発生から5年になるのを目前に、警視庁成城署が犯人に向けて、出頭するようを呼びかけました。きょう(2005年12月12日)の朝日新聞夕刊は、この「呼びかけ」を写真入りで社会面で報じています。

事件は、親子4人が惨殺されたとても痛ましいものです。凶器や衣服など、犯人の遺留品は多かったようですが、具体的な容疑者は浮上していません。

こうした状況では、新聞は警察を応援こそすれ批判すべきではない、という考え方もあるでしょう。犯人逮捕が最優先なんだから、警察がすることを温かく見守るべきだといった発想です。

そうした考え方も、わかるような気がします。犯人逮捕を望まない人は、あまりいないでしょうし、大多数の警察官は懸命に捜査を続けていることと思います。

ただ、チェック機関としての新聞はやはり、強大な権限と多額の税金を使っている組織や人々に対しては、「絶えず」厳しい目を注ぐ必要があるように思います。そして、行動や言動に問題があればあるほど、しっかりとした批判をすることが使命のはずです。

その意味では、きょうの朝日は、新聞の役割を果たし切れていないように思います。

記事は、〈捜査幹部や地元住民ら530人が集まった中、捜査本部に加わる成城署刑事組織犯罪対策課の田頭エミ巡査部長がメッセージを呼びかけた〉と集会の様子を報告。〈「死にたくない、と必死に抵抗した4人の姿を覚えていますか。闇の中で満足なのか、一家を殺害してまで果たそうとした思いは何だったのか、答えを待っています」〉と、メッセージの内容を紹介しています。

胸に迫ってきそうな言葉です。涙とともに受け止めた人もいたかもしれません。

しかし、遺族や近所の人々が言うのならいいのですが、警察が〈「答えを待っています」〉は、さすがに無いんじゃないでしょうか。

これは、犯人に自首してくださいとお願いしているのと同じです。捜査が行き詰まり、容疑者にたどり着けない状況で、捜査員がそういう気持ちになるのは理解できます。でもそれは、マスコミが取り囲む中で、マイクを使ってはきはきと表明するようなことでしょうか(もちろん、問題視されるべきは呼びかけ人となった巡査部長ではなく警察組織です)。時効まで10年を残して、「お手上げです、だから出てきて」と言うのは、正直かもしれませんが、治安を守る警察としては、取るべき態度なのでしょうか。

また、これで犯人が本当に自主してくるとは、さすがに警察も思ってはいないはずです。であれば、今回の呼びかけは、いったい誰に向け、どういう目的でしたものなのかという疑問もわいてきます。

きょうの朝日の記事には、この警察の「ギブアップ宣言」を、ちゃんと批判的にとらえる視点がありません。警察記事にも、捜査に協力的だったり、警察に同情的だったりする記述があってもいいとは思います。ただ、警察の〈「答えを待っています」〉という、ひざががっくりと折れるようなメッセージを耳にしながら、それをただ活字にするだけでスルーしてしまうのは、新聞としては責任を果たしていないように思います。

 ———

読売夕刊も社会面で、簡単にこの「呼びかけ」を取り上げていますが、朝日と同じく、批判的な見方はありません。
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by tmreij | 2005-12-12 23:54 | 本紙

イラクにいる自衛隊がさっぱり見えない

自衛隊のイラク派遣期間を1年間延長することが決まりました。きょう(2005年12月9日)の全国紙朝刊は、1面と総合面、社会面などで、このニュースを大きく伝えています。

イラク派遣をめぐっては、朝日が〈派遣に反対した私たちの基本的な立場は変わらない〉(社説)と訴え、読売は〈幅広い視野からみて、派遣は正しい判断だったと思う〉(解説面)と書くなど、新聞によって評価は大きく違っています。

一方で、共通点もあります。どの新聞にも、現場からの報告がない点です。

自衛隊がどんな状況に置かれ、何をし、何ができず、地元住民らからはどのように評価されているのか。そういった点が見えてこないため、今回の派遣延長の決定をどう考えてよいのか、よくわからない読者が多いのではないでしょうか。

唯一、毎日が国際面で、〈市民の評価二分 サマワ 復興遅れに不満も〉という見出しを掲げ、サマワの市民3人の声を伝えています。ただこれも、カイロにいる記者が電話で取材したもので、記者の五感で現地の空気を伝えたものとはいえません。

朝日と読売は、イラク派遣から戻った自衛隊員に現地の様子などを語らせています。しかし、客観的な現地報告とは、やはり違います。

政府が重要な決定をしたのに、チェック機関である新聞各社が、さっぱりチェックすることができていないのです。新聞がこうなのですから、読者はますます、派遣延長を批判的にみることができず、政府発表をだまって受け止めるような事態になってしまっているように思います。

危険だからというのが、各社が現地に記者を送り込まない理由でしょう。しかし、きょうの東京新聞がイラク北部で取材するジャーナリストの話を掲載していることからもわかるように、イラクで取材をしている人はいます。たとえサマワに入れないとしても、カイロやアンマンから記事を発信するよりは、イラク国内で取材した方がより臨場感のある記事になるはずです。ずっと駐在するのは難しくても、タイミングを見計らって短期取材をするという方法もあるでしょう。

いまのままでは、新聞が自衛隊派遣を検証する役割を果たしているとはいえません。読者としては、的確な情報を得られず、いわば「暗闇」にいるようなものです。自衛隊のことに限らず、よく言えば大胆、悪く言えば乱暴な政策というのは、こういう状態のときにダダダと推し進められてしまうものかも、と感じています。
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by tmreij | 2005-12-09 19:17 | 本紙

「大連立」の誘いについて、ちゃんと説明させよ

小泉首相が、民主党の前原誠司代表に、連立政権を組もうと呼びかけていたようです。きょう(2005年12月8日)の毎日新聞夕刊は、〈「民主に大連立打診」報道 前原氏「関知していない」〉という見出しで、次のように伝えています(19行しかないので全文を引用します)。

〈訪米中の民主党の前原誠司代表は7日午前(日本時間8日未明)、「小泉純一郎首相が9月下旬、側近を通じて前原氏に自民、民主両党の『大連立』を打診し、前原氏が断った」という共同通信の報道について「それについては関知していない。連立の可能性は99.99%ない。我々は選挙によって政権交代を実現したいという考えにまったく変わりはない」と語った。ワシントン市内で記者団の質問に答えた。前原氏が明確に否定しなかったことに関心が集まっている〉

これを読んでわからないのは、結局、小泉氏から前原氏に誘いはあったのか、それともなかったのか、という点です。

自民党と民主党の「大連立」なんて、びっくりたまげるような話です。そんな話を、首相が持ち出していたのかどうかという事実関係は、読者としては大いに気になるところです。

〈前原氏が明確に否定しなかった〉なんてまわりくどい表現はありますが、こんな言い方などせず、打診について「認めた」または「否定した」とすっきり書くべきです。

そう書いていないのは、事実関係についてしっかりと質問していないからかもしれません。もしそうであれば、記者の怠慢もいいところです。〈ワシントン市内で記者団の質問に答えた〉と書いていますから、前原氏に直接説明を求める機会はあったはずです。それなのに、〈明確に否定しなかった〉といった程度の報告しかできないなんて、記者としての仕事をしていないと言っているようなものです。

おそらく、前原氏にとっては触れたくない話題であり、それゆえに言葉を濁していることが推測できます。しかし、そうした話題だからこそ、きちんと語らせるのが記者の仕事のはずです。だいたい、前原氏は最大野党の党首なんですから、説明責任は大きいはずです。新聞は断固として、明確な答えを求めるべきなのです。

当事者の一方に直接質問する機会がありながら、打診の有無さえ確認しない(できない)なんて、新聞は何をやっているんだという批判を浴びても仕方ないと思います。

 ———

読売の夕刊は、関係者の話をもとに、打診はあったと断定。〈小泉首相が先の衆院選直後の9月下旬、民主党の前原代表に対し、連立政権構想を打診していたことが8日、明らかになった〉と報じています。

ただ、前原氏の反応については、〈記者団に対し、「自民党との連立の可能性は99.99%ないし、選挙によって政権交代を実現したいという考えに全く変わりはない」と述べた〉と書くだけ。毎日と同じく、打診の有無について、前原氏の口からは語らせていません。

一方、小泉氏側の反応がどこにも載っていないのも気になります。これについても、新聞は怠慢だとのそしりは避けられないと思います。
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by tmreij | 2005-12-08 23:59 | 本紙

不安になるだけの米牛肉輸入再開記事

きょう(2005年12月7日)の朝日新聞朝刊は、米国産牛肉の輸入再開を、政府が12日に決定する方針だと1面で伝えています。

輸入禁止の原因となっていた牛海綿状脳症(BSE)汚染については、内閣府食品安全委員会が〈「日本の牛肉とのリスクの差が非常に小さい」〉との結論を出したとのこと。そして、このままいけば、〈クリスマス前後には、小売店や外食産業の一部を通じて日本の消費者に米国産牛肉が届くようになる見通しだ〉と報じています。

このニュースについては、朝刊段階では、毎日は1面にちょこっとだけ記事を載せているだけ(あわてて突っ込んだ?)、読売にはまったく記事がないことからみると、実質的に朝日の特ダネなのでしょう。1面に加え、経済面、生活面にも関連記事を載せるなど、朝日は力の入れた報道をしています。

ただ、それらの記事を読んでも、大丈夫かよ、という不安が高まるばかりです。もうちょっとこう、消費者の身になって、厳しく政府の判断を検証したり、強く業界に対策を求めたりし、消費者の安全が高まるような内容の記事を出してほしいという気持ちになります。

不安感や怒りをいちだんと盛り上げてくれるのは、経済面の〈対米配慮の「政治決着」 消費者への説明後回し〉という見出しの解説記事です。そこでは、〈「拙速」にも見える政府の方針の裏には、早期の輸入再開を強く求めてきた米国への配慮がある〉と説明しています。

国民の安全より米国への配慮を優先しているというのですから、ひどい話です。政府はそんなんじゃだめだ、とビシッと言ってくるんでしょうな、と期待しながら読み進めたのですが、記事は最後に、〈消費者の不安を解消する努力を政府が怠って「政治決着」に走れば、こんどは国民から批判を浴びることになる〉と論評するだけ。非常に日和見主義的に、ゆるくクギを刺す程度で終わっています。

一方、生活面の記事〈米国産牛肉 本当に安全?〉は、生活面らしく、消費者として気になることについて、Q&A形式でまとめています。そのひとつに、以下のようなものがあります。

〈Q 消費者はどのように受け止めればいいのか〉〈A 専門家は最終的な判断は、消費者自身が決めることだとしている。ただ、それには現在は義務化されていない加工食品などでも原産地表示をきちんとし、大作の監視状況についても随時発表するなど、消費者が選択できる情報公開が徹底されないと、安心にはつながらないだろう〉

質問と答えがいまいちかみ合っていませんが、それはまあいいとして、答えの部分に書かれていることは、そのとおりでしょう。米国産牛肉は怖くて買わないという人がいる一方、リスクを承知で安い米国産牛肉を買う人もいるはずで、消費者の自由な選択に任されるべきです。ただ、選択をするうえで、どこの国の牛肉なのかという情報は不可欠であり、精肉であろうが加工食品であろうが、原産地の情報は必ず提供されるべきでしょう。

しかし、この日の朝日は、〈情報公開が徹底されないと、安心にはつながらないだろう〉といった、のんびりした見解を示すだけです。クリスマスには店頭に並ぶという状況を前にして、新聞が本当に消費者の立場に立つのであれば、原産地表示は100%されなければならず、表示しない業者は排除されるべきだ、ぐらいの強い意見を発信すべきではないでしょうか。

もしかしたら、消費者の思いに偏ることなく、政府への理解や、業界への配慮もにじませて、紙面としてバランスを取ろうとしているのかもしれません。でも、こんなケースでは、すっかり消費者の側に立って、政府や業界を突き上げることこそが、新聞の役目だと思います。
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by tmreij | 2005-12-07 23:57 | 本紙