2006年 04月 30日 ( 1 )

1面トップが、こんなに雑でいいのか

小泉首相の靖国神社参拝が、日米関係にまで悪影響を及ぼしかねないとの考えが米国内で広がっている。きょう(2006年4月30日)の朝日新聞は、そんな内容の記事を1面トップに載せています。

記事のねらいや視点については支持します。しかし、記事の手法については疑問を覚えます。

〈「靖国」日米に影〉〈「対日批判増す」専門家ら懸念〉〈米の歴史観・アジア戦略と対立〉という見出しをつけたこの記事は、次の文章で始まります。

〈日本の歴史問題への対応が、日本と中韓両国との関係だけでなく、日米関係にも悪影響を及ぼしかねないとの懸念が米国の日本専門家の間で広がっている〉

これを読んだ人は、当然ながら、「懸念が広がっている」様子についてのデータを期待するでしょう。アメリカでどんな現象が起きているのか、どれぐらいの人々の間で、どんなふうに懸念が広がっているのか、といったことが気になると思います。

ところが、今回の記事に出てくる〈米国の日本専門家〉は、〈ジョンズ・ホプキンズ大学ライシャワー東アジア研究所のケント・カルダー所長〉と、〈ジョージ・ワシントン大学アジア研究所のマイク・モチヅキ所長〉だけです。この2人が靖国問題を心配するコメントをしていることをとらえて、〈懸念が米国の日本専門家の間で広がっている〉と解説しているのです。

これは、ちょっと乱暴ではないでしょうか。

〈広がっている〉という「動き」を伝えるのであれば、その様子がわかるデータを示す必要があるはずです。靖国問題を懸念する論文や寄稿文の数が増えているとか、靖国問題を取り上げる学会やセミナーが多くなっているとか、靖国問題は大丈夫なのかと日本の専門家や関係者などに問い合わせる人が増えているとか。

しかし、今回の記事で〈広がっている〉ことを感じさせるのは、〈「歴史問題が原因で、日本に対する批判的な見方が強まっている」〉というモチヅキ氏のコメントぐらいです。ただ、これとて一専門家の分析であって、〈広がっている〉ことを客観的に示す事実ではありません。

〈外交を担う国務省内には……日中首脳会談もままならない日本に対するいらだちがある〉という記述も出てきます。しかしこれも、詳しい説明はなく、〈日本に対するいらだち〉が米国内にあるかないかを述べているだけで、〈広がっている〉ことの裏付けにはなっていません。

今回の記事にあるデータでは、「懸念が出ている」「懸念の声が挙がっている」などとは言えても、「懸念が広がっている」とは言えないと思います。邪推すれば、モチヅキ氏ら高名な学者のコメントを使うことで、記事が提示する「事実」に説得力をもたせようとしているのではないかとも考えられます。

1面トップで、しかも論説委員が書いているだけに、今回の記事は雑なところが気になります。新聞は、何らかの「事実」を伝えるときには、ちゃんとデータでそれを示すべきです。
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by tmreij | 2006-04-30 23:26 | 本紙