2006年 04月 24日 ( 1 )

で、当選した人はどんなアイディアの持ち主なのか

衆院千葉7区の補欠選挙で、民主党の太田和美氏が当選しました。きょう(2006年4月24日)の全国紙各紙朝刊は、この選挙結果について、1面や総合面、社会面などで大きく報じています。

偽メール問題で大打撃を受け、党首が交代した民主党が、小泉自民党相手にどこまで戦うことができるのか。そこが注目されていたので、この日の紙面もその見方に沿った記事が目立ちます。

そうした記事があるのはいいのですが、あまりに「民主vs自民」という構図に力点を置き過ぎ、別の大事な情報をちゃんと伝えていないような気がします。当選して国会議員となる太田氏とは、一体どんな考えをもった人物なのか、という点です。

この日の紙面が、政党重視で人物軽視なのは、1面をぱっと眺めただけで明らかです。主見出しで「太田」の名前を入れたのは、〈民主・太田氏競り勝つ〉とした毎日だけ。朝日は〈民主、自民に競り勝つ〉ですし、読売になると〈小沢・民主 競り勝つ〉と、当選者より党代表を主役にしています。

写真も、太田氏をメインに、民主、自民両党の幹部を小さく並べるのが基本かと思うのですが(朝日はこうしている)、毎日はその逆で、笑顔で握手する民主党幹部をでかでかと載せ、その下に小さく太田氏を配置しています(読売は太田氏の小さなプロフィール写真だけ)。

このような1面に、文句をつけているわけではありません。最近の政治をめぐる状況を考えれば、妥当だと思います。

しかし、2面以降、社会面までめくっていっても、太田氏が具体的にどういう考えをもった人なのかがよくわからないのは、いかがかと思います。読者にすれば、太田氏の政治や社会に対する考え方を知ることで、「ああ、そういう人が国会議員に当選したのか」とか、「なるほど、そういう考えが有権者に評価されたのか」などと理解できるはずですが、そうした記述がほとんどないのです。

強いてあげれば——〈雇用、高齢者福祉、教育の現場に「格差が広がっている」と指摘し、「負け組ゼロの社会が必要」と訴えた〉(朝日)、〈小泉改革の負の面とされる「格差社会」に焦点を当て、「負け組ゼロの社会にしよう」と訴えた〉(毎日)、〈太田氏は「負け組ゼロ」を公約に掲げ、「反対者を切り捨てる小泉政治よりも、友愛の政治を」と訴えた〉(読売)——といったところです。

太田氏が「負け組ゼロ」と唱えていたらしいことはよくわかりますが、そのために何をするのかということは、さっぱりみえません。各紙、さっぱり書いていないからです。(朝日は社会面で、主に太田氏の経歴に焦点を当てた記事を載せていますが、具体的な政策などは書いていません)

一方で、「ママチャリによる選挙活動」といったことに対しては、各紙とも面白がって書いています。イメージ戦略としてすでに陳腐な感じがあるうえ、選挙戦になって〈1台6800円の自転車をスーパーで買い〉(毎日)求めたということなので、太田氏はそれまであまり自転車に乗っていなかったと想像できます。

それでも毎日と読売は、自転車にまたがってニッコリとVサインを出す太田氏の写真を掲載。さらに朝日を含め全紙が、太田氏は〈374キロ〉を自転車で走ったと、「伝聞」としてではなく、「事実」として伝えています(おそらく事実確認せずに)。ともあれ、この「自転車選挙」に関する記述も、太田氏の政治に対する考え方をわかりやすく示しているとは思えません。

もしかしたら、地元の千葉県版には、太田氏の具体的な政策や政治に対する考えが詳しく載っているのかもしれません。また、前日までの紙面ですでにいろいろと書いてきたのかもしれません。しかし、きょうの新聞でこれだけ展開するのであれば、きょうの本紙にも、太田氏がどんな考えの持ち主なのかを伝える記事を掲載すべきです。

選挙報道では、投票結果が国政にどんな影響を及ぼすかといった「大枠」について書くことは、大事なことだと思います。でも、選挙区選挙とは本来、地域の代表者を選ぶ作業のはずです。どういう政策を掲げ、どんな具体的なアイディアをもった人(または、いかに無策無案な人)が当選したのかということも、同じぐらい大切な情報のはずです。新聞は、政党や政局にからめた記事ばかりではなく、「人」に焦点を当てた記事も、もっと載せるべきだと思います。

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今回の補選について、1面記事では〈政策面では明確な争点がなく〉と書き、社説になると〈「格差社会」や「男女共同参画」など、国政での論点がそっくり争点になった〉と解説しているあたりは、良い悪いは抜きにして、毎日らしい感じが出ていてスキです。
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by tmreij | 2006-04-24 23:52 | 本紙