2006年 04月 17日 ( 2 )

「くだらない質問をするな」と言われて、それでいいの?

石原慎太郎・東京都知事が、特攻隊を題材とした映画の制作総指揮と脚本をするようです。きょう(2006年4月17日)の朝日新聞夕刊は、今月初めにあった制作発表会見の様子を、芸能欄で伝えています。

芸能欄の記事ですので、さらりと読み流すべきなのかもしれません。しかし、それにしてもあんまりではないかと、読んでいてちょっと腹が立ってきます。

理由その1。知事をやりながら映画の制作総指揮と脚本を担当するなんて、公務に影響は出ないのか。そういう疑問に答える記述が、まったくありません。

記者はこの点について、まったく疑問に思わなかったのでしょうか。石原氏は、地方公務員(特別職)でありながら、平日でも登庁せずに、雑誌や新聞、本などの原稿を書くなどしていることで知られています。そうした勤務ぶりに、記者のほうが慣れてしまい、問題意識が無くなってしまっているのでしょうか。

理由その2。〈石原知事は「監督から過激な発言はするな、と言われて自重している」と言いつつ、「最近の若い俳優は知らない。みんな同じに見える」と出演者を苦笑させたり、「くだらない質問をするな」と記者をしかったり〉という記述が出てくるのですが、いったいこれは、どんなつもりで書いているのでしょうか。

記者会見や取材の場では、聞いていてたしかに「くだらない質問だなあ」と感じさせる問いはあると思います。でも、石原氏のような地方公務員(特別職)に〈「くだらない質問をするな」〉と言わせるのは、よくありません。

そうやって、公務員や政治家たちが、何がくだらない質問で何がくだらなくない質問なのかを自分たちで選別し出すことは、とても危険です。都合のいいことだけ言い、しゃべりたくないことは〈「くだらない質問をするな」〉で済まそうとします。言論の自由と情報公開を推し進めるには、「くだらない質問」にも寛容であることが大事なはずです。

公務員としてではなく、私人として映画に携わるのから、〈「くだらない質問をするな」〉と言ったって問題はない、という考えもあるかもしれません。しかし、首相の発言がほぼ四六時中、公人の発言であるのと同様、東京都知事のような要職に就いている人の発言も、常に公人の発言ととらえるべきだと思います。今回の記事だって、「作家の石原慎太郎氏が制作総指揮と脚本を担当する……」などとは書かず、〈石原慎太郎・東京都知事が制作総指揮と脚本を担当する……〉と書いています。

今回の記事は、〈「くだらない質問をするな」と記者をしかったり〉した場面をあえて紹介することで、石原氏への批判の意味を込めたのかもしれません。芸能欄ですし、短い記事ですので、それぐらいが精いっぱいなのかもしれません。

ただ、石原氏に言わせっぱなしなのは、やっぱり気になります。公務への影響を検証するとともに、〈「くだらない質問をするな」〉発言の「落とし前」を、新聞はどこかできっちりつけるべきだと思います。石原氏は地方公務員(特別職)兼作家兼映画脚本家なんですから、芸能欄でやったっていいと思うのですが。
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by tmreij | 2006-04-17 23:30 | 本紙

民主党の露骨な演出に手を貸すべきではない

衆議院千葉7区の補欠選挙で、小泉首相と民主党の小沢代表が、街頭演説に立ちました。きょう(2006年4月16日)の朝日新聞朝刊は、1面で両党首の演説姿の写真を並べて、この演説について報じています。

この2人の写真や写真説明、記事本文などをみると、ちょっと民主党(の下手な作戦)に甘過ぎない? という印象を覚えます。

1面写真の右側は小泉氏です。マイク片手に、候補者のものと思われる白手袋をはめた手をつかみ上げています。写真には、〈応援演説に訪れた小泉首相〉という説明がついています。

左側の小沢氏の写真も、マイクを手に演説しているという点では小泉氏と同じです。ただ、小泉氏の写真が上半身だけなのに対し、小沢氏は全身が写っている点で大きく違っています。2枚の写真は隣り合っているだけに、ぱっと見ただけで妙な感じがします。

なぜこんなことになっているのでしょう。答えは、小沢氏の足もとにあるように思います。

小沢氏は、プラスチック製のビールケースらしきものを2段重ねにした「お立ち台」に乗って、演説しました。写真記者はこのことを面白いと思い、台まで入るように撮影したのだと思います(そのため、小泉氏の写真よりも1段分たて長になっています)。写真説明も、〈即席の台に上って演説する民主党の小沢代表〉と、台について強調しています。

演説台つきの選挙カーや、移動可能なお立ち台を用意する資金がない。この際、台として使えるものならなんでもいい。そんな事情でビールケースを組み上げたというのなら、まだ注目に値するかと思います。しかし、民主党がそこまで金に困っている政党かというと、そんなことはないはずです。

ビールケースのお立ち台は、「庶民的」「反金権体質」「なりふり構わないほど真剣」などのイメージを植え付けようとした民主党の、計算された、あまり上手とはいえない演出でしょう。ビールケースには、「政権を代えれば、年金が変わる」「まずは、ムダづかいストップ」というメッセージや党名、ロゴマークが入ったステッカーが、べたべたと貼られています。近所の店からちょっと拝借してきたのではなく、民主党があらかじめ準備した「道具」であることは明らかです。

そんな、クサくていやらしくて時代遅れの演出に、新聞がわざわざ協力してあげることはないはずです。それなのに、この日の朝日は、1面の記事でも、〈対する小沢代表。午後3時ごろ、野田市周辺の田畑に囲まれた集落でビールケースに乗った〉と、ビールケースを売り出しています。

民主党のクサい演出を笑う、という狙いで取り上げたとしたら、意味はあるでしょう。でも、今回の写真を見て、民主党って白々しいことやるよなあ、と受け止める読者より、民主党のほうが素朴で純粋かも、という印象をもつ読者のほうが、もしかしたら多いのではないかという気もします。その意味では、朝日としてはチクリとやったつもりだったとしても、あまりうまくはいっていないように思います。

自民党と比べて、民主党のほうがより「庶民的」な政党だといえる部分はあるでしょう。その部分を、民主党が精いっぱい売り込もうと努力するのは結構ですし、もっともなことだと思います。

しかし、今回のように、あまりに見え透いた幼稚な演出にまで、新聞がお付き合いする意味はありません。みようによっては、新聞も、民主党の意図に素直に引っかかっている感じもします。へんな演出に対しては、無視するか、ちゃんと笑ってあげるかの、どちらかにすべきだと思います。
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by tmreij | 2006-04-17 00:07 | 本紙