2006年 01月 30日 ( 1 )

不正改造をなぜ知っていたのか

全国にチェーン展開するビジネスホテル「東横イン」で、不正な改造工事が次々と見つかっています。きょう(2006年1月30日)の朝日新聞は、朝刊社会面と夕刊1面トップで、工事の実態に関する続報を大きく掲載しています。

改造されたホテルがこれだけあっただけでも大変なのに、社長が〈「身障者客室を造っても、年に1、2人しか来なくて、一般の人には使い勝手が悪い」〉(朝日1月27日付夕刊)と言い放つなんて、東横インはもう身売りするしかないようにも思います。新聞には、ホテルの行く末は気にせず、遠慮のない追及を続けてほしいと思います。

ところで、今回の報道では、ずっと気になっていることが1つあります。話題としては数日前にさかのぼるのですが、どうも気になるので、やっぱり書いておきます。

今回の東横イン偽装工事報道は、朝日の1月27日付朝刊のスクープで始まりました。特ダネということで、朝日は1面トップに〈二重図面で偽装工事〉〈東横イン 検査後に設備改造〉といった大見出しの記事を載せ、社会面トップにも関連記事を掲載。一方、抜かれた毎日と読売は、ともに同日夕刊の社会面で、このニュースを追いかけています。

引っかかるのは、朝日が1面スクープ記事につけている写真です。改造が発覚した「東横イン・横浜日本大通り駅日銀前」の正面入口部分のカラー写真3枚を縦に並べ、〈届け出通り完成したホテル正面〉(適正な状態)→〈1階部分を取り壊した状況〉(不正改造中)→〈開業当日〉(条例違反など不正な状態)という移り変わりがわかるようにしています。撮影日は、古い順に〈昨年12月29日〉〈1月14日〉〈1月23日〉となっています。

これらの写真からは、「東横イン・横浜日本大通り駅日銀前」で不正改造工事が行われることを、朝日は遅くとも昨年末には知っていたことがわかります。知っていたからこそ、殺風景な駐車場(昨年12月29日)や、どう見てもふつうの工事風景(1月14日)の写真を撮影しておいたのでしょう。

また、この日の社会面記事では、記者が改造工事の様子を観察していた記述も出てきます。このことからも、朝日が不正改造について事前に情報を得ていたことがわかります。

そのことが、なんか気になるのです。

なぜ朝日が事前に知っていたのかが、まず不思議に思えます。読者にとっては大きな疑問ですが、これに対する朝日の説明はどこにもありません。改造工事について朝日に密告があり、情報源を守るために何の説明もしていない可能性はあります。その場合、朝日が事前に知り得た理由について書くのはなかなか難しいことですが、方法はまったくないわけではないと思います。難しいからといって、この記事のように、読者に大きな謎を与えたままにしておくのは、避けるべきだと思います。

さらに、何ともいえない居心地の悪さを覚えるのは、不正が行われるのをあらかじめ承知し、実際に不正がなされているのをじっと見ていたことに対して、朝日からはひと言の説明ないことです。不正に関する情報をつかんでも、現実に不正が行わなければ社会悪とはならないので、不正を確認してから記事にすることは、それ自体問題だとは言えないでしょう(事案にもよりけりですが)。ただ、読者のなかには、「なぜ不正行為を最初から最後まで観察していたのか」という疑問を覚え、記事に異様な印象をもった人もいたのではないでしょうか。結論としては先ほどと同じですが、不正改造を観察するに至った経緯と、取材の方法についても、簡単にでも触れるべきだったように思います。

朝日は、東横イン偽装工事報道に力を入れています。それは大変結構なのですが、読者に疑問を残すような記事の仕立て方はよくないと思います。そうした個々の疑問がやがて新聞全体への不信に変わることが多々あることを、新聞はもっと意識すべきだと思います。
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by tmreij | 2006-01-30 23:59 | 本紙