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日銀総裁は、福井氏でなくてもいいのか

村上ファンドに投資し、利益をあげていた福井俊彦・日銀総裁に対する批判が続いています。きょう(2006年6月27日)の朝日新聞朝刊は、同紙の世論調査の結果とからめ、1面と3面、経済面で記事を展開。実質的に総裁辞任を迫っています。

世論調査では、有効回答があった有権者1965人のうち、〈総裁を「辞めるべきだ」と答えた人は67%に上り、「辞める必要はない」の25%を大きく上回った。日銀の金融政策への信頼が「傷ついた」と思う人も70%に達し、「そう思わない」は25%〉とのこと。そうした結果から朝日は、〈中央銀行の信頼回復ができないなら、福井総裁は自らの地位にも固執すべきではない〉と主張しています。

こういう記事があってもいいと思います。ただ、今回の福井氏をめぐる報道では、新聞は全体として「市民感情」に大きく寄りかかった記事を量産し、読者が落ち着いて考えるための手助けにはあまりなっていないように感じています。

そう感じる大きな理由は、新聞を読んでいても、福井氏がどれだけ重要な(または重要ではない)人なのかがよくわからないからです。

これまでの報道は、福井氏が優秀な日銀マンであることを伝えています。きょうの朝日も、〈若くして日銀内でプリンス(総裁候補)と呼ばれた〉と略歴を紹介しています。また、他紙を含め、福井氏と同等の力量をもつ後任の総裁候補が見当たらない、といったことも報じています。

ということは、福井氏が辞めると日本の経済に多大な悪影響が及ぶということなのでしょうか。であれば、感情としては「辞任すべきだ」という立場の人も、「うーん、面白くはないが、総裁の仕事を続けさせよう」という考えに変わるかもしれません。

ただ、福井氏がかけがえのない人物であるようなことを書きながら、一方できょうの朝日のように、〈「政策判断は福井氏を含む日銀政策委員会のメンバー9人の合議制で決まる」(日銀幹部)との理由から、(日銀は今回の問題が今後の金融政策に与える)影響は最小限に抑えられる、との立場だ〉などと、福井氏の影響力を小さく見積もる声を伝える記事も少なくありません。

で、本当のところはどうなんでしょうか。総裁は福井氏でないと大変なことになるんでしょうか。それとも、他の人になってもそんなに変わらないのでしょうか。

それこそ、新聞がしっかりと分析し、読者に提供すべき大事な情報ではないでしょうか。

日銀総裁が投資で1473万円の利益を得ていたことに対し、多くの国民が強い怒りを感じ、「辞めろ」と主張するのは当然です。でも、「辞めろ」と言う人のなかには、「ところで本当に辞めちゃったら大丈夫なんだろうか」と不安に思っている人は少なくないように思います。

そういう人が確信をもって心底「辞めろ」と言えるような、または、「続投やむなし」などと考えを変えられるような、そんな役立つ記事を、新聞はもっと書くべきだと思います。
by tmreij | 2006-06-27 23:25 | 本紙


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