なぜ朝日新聞に取材しないのか

将棋の「名人戦」(毎日新聞主催)をめぐって、日本将棋連盟が毎日新聞との契約を解消し、主催者を朝日新聞に変える動きをみせています。きょう(2006年4月13日)の毎日新聞朝刊は、社会面でこの話題を大きく伝えています。

〈私たちにとりまさに寝耳に水でした〉という毎日が、〈なぜ契約解消なのでしょう?〉と詰め寄りたくなる気持ちは想像できます。また、中原誠・将棋連盟副会長から〈朝日新聞が高額の契約金や協力金を示し、名人戦を朝日新聞にもってくるよう強く要請しているから〉という説明を受け、同連盟と朝日新聞に怒りをあらわにしたくなる気持ちも、それなりに理解できます。

しかし、この日の毎日は、読者の存在など気にしていないかのような報じ方をしているのが気になります。

毎日は、〈名人戦 朝日へ移管提案〉という見出しの記事に加え、〈「毎日の名人戦」守ります〉という見出しをつけた東京本社編集局長名による長行の声明記事を掲載(この日の毎日の第2社会面は、前日に勝負がついた今期の名人戦第1局に関する記事と合わせると、紙面の約3分の2が名人戦の話題で埋まっていて、さながら「将棋面」です)。ここまで紙面を割くことなのか、という気はするのですが、まあそれはいいとします。

それよりも問題なのは、記事では朝日を批判するだけで、朝日の動きや見解については、間接情報しか書かず、直接取材をしていないように見受けられることです。

名人戦は過去に、主催者が毎日から朝日に変わり、また毎日に戻ったという歴史があるようです。この、朝日から毎日に再変更された経緯について、この日の記事は、〈毎日はきちんと手順を踏んだのです〉と説明。暗に、今回の朝日の「寝耳に水」のやり口を、汚いと非難しています。

そうしておきながら、ではいったい朝日が具体的にどんな動きをみせ、どんな考えをもっているのかに関しては、〈連盟によると……〉〈中原氏によれば……〉〈(理事会の)出席者によると……〉などと、伝聞情報を連ねるばかりです。朝日を情報源としているデータは、まったく書いてありません。

毎日はなぜ直接、朝日の動きや言い分について取材し、書かないのでしょうか。

ひとつ考えられるのは、メンツです。毎日の編集局長は、〈朝日新聞からはいまだに何の連絡もありません〉と書いています。この文章からは、こっちから問い合わせをする前に、朝日から説明があって当然だろう、それがない限り、取材も含めて、こっちから今回のことについて質問なんかできるか、という気持ちが感じ取れます。

この気持ちは、一般的な人付き合いや会社間のやりとりでは、もっともなのかもしれません。しかし新聞は、不特定多数の読者に向けて情報を発信している点で、一般企業とは大きく違うはずです。読者にしてみれば、朝日側の説明や言い分を聞きたいと思うのは当然でしょう。将棋連盟や中原副会長の話の引用ではなく、直に朝日に取材してその答えを書いてくれよ、という気になるのではないでしょうか。

メンツを張ることと、読者によりよい記事を届けることのどちらかを選ぶことになった場合、新聞は常に後者を選ぶべきです。今回の記事からは、読者よりメンツを優先しているような印象を覚えます。

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この日の朝日新聞朝刊は、同じく第2社会面で〈名人戦 契約解消へ〉という見出しの記事を載せ、将棋連盟側が赤字対策として、〈昨年夏、朝日新聞社に契約移管を打診〉してきたと書いています。朝日側が主催者の移管を言い出したとする毎日の記事とは食い違っているわけですが、このへんの事実関係については、朝日も毎日もちゃんと事実関係を詰めてほしいです。どっちも新聞なんですから。
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by tmreij | 2006-04-14 00:25 | 本紙


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