ニコチンパッチ処方、「法律違反」の指摘は無視?

きょう(2006年3月6日)の毎日新聞朝刊は、ニコチンパッチという禁煙補助薬の使用を、歯医者が患者に指示することが増えいている、という話題を第2社会面で取り上げています。

〈歯科医処方は是か非か〉という5段の大見出しが示しているとおり、記事は、歯医者がニコチンパッチを処方することの善し悪しについて問題提起。ただ、完全に客観的な立場かというとそうではなく、〈結果的に歯科医に処方を促している自治体もある〉ことを紹介し、〈「歯科医による禁煙指導は効果的で、厚労省は例外として処方を認めるなど柔軟な対応を検討してほしい」〉という大学教授のコメントで記事を結ぶなど、印象としては、どちらかというとすでに処方している歯科医を擁護しています。

このように、あることがらの是非を問う体裁をとりながら、どちらかの立場をそれとなく支持する記事は珍しくありませんし、そういう記事があってもいいと思います。ただ今回の記事では、片方に甘すぎる嫌いがあり、読者としては、新聞の批評精神は都合のいいときにしか発揮されないのか、という感想をもちます。

記事によると、腕などに張ることで体内にニコチンを浸透させるニコチンパッチについて、厚労省は〈「全身に影響するような医療品」〉に分類。これをもとに、歯医者による処方については、医師法違反だとの見解を示しています。

こうした見方を知ると、読者としては当然ながら、すでに処方している歯科医や、〈結果的に歯科医に処方を促している自治体〉がこの点についてどう考えているか、気になるところではないでしょうか。

ところが今回の記事は、記事に登場する〈西日本のある歯科医〉にも、〈ホームページ(HP)などで処方を宣伝している〉歯科医にも、〈結果的に歯科医に処方を促している自治体〉である和歌山県にも、まったくこの点については語らせていません。もちろん取材時には、国が歯医者の処方を法律違反だとみていることについてどう思うのかを聞いているはずですが、その問いに対する答えは、記事では1行も触れていないのです。

きょうの記事は、法律違反をしている歯医者たちを告発することが狙いではないため、不法行為に関する言及が甘くなるのは理解できます。ただ、片方(非側)で「法律違反だ」という声があることを伝えながら、もう片方(是側)はそのことについてまったく無視しているかのように書くのは、読者に消化不良を起こさせます。そればかりか、この新聞は、片方を応援するため、都合の悪い内容は意図的に排除しているのではないか、という疑いさえももたせます。

日本は一応、法治国家です。時代や状況にそぐわない法について、どんどん意見を言って変えたり廃止したりしていくのはよいことだと思いますが、それとは別に、現存する法律に違反しているとの指摘がある場合、指を差された人の言い分を聞き、批判すべきところがあれば批判し、応援すべきところは応援するというのも、新聞の大事な役割のひとつだと思います。なんにしろ新聞にとって大事なのは、当事者の言い分をちゃんと書くことだと思います。

今回の記事では、さらりとひと言でもいいから、歯科医師側の言い分を紹介すべきだったと思います。
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by tmreij | 2006-03-06 23:59 | 本紙


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