イラクでテレビ放送されていても、日本のメディアは不知

イラクを旅行中だった日本人を殺害したとされる男性が、現地で逮捕・起訴されたようです。きょう(2006年3月2日)の全国紙夕刊は、このニュースを1面などで大きく報じています。

各紙の記事のクレジットから明らかなように、このニュースは時事通信の特ダネです。朝日の1面に載った時事の記事は、〈男は捜査官同席の下で、時事通信イラク人通信員の取材に応じ、香田さんを殺した時の模様などを詳細に語った〉と伝えています。

決して明るいニュースではありませんが、スクープを放った点においては、時事は報道機関として称賛に値すると思います。ただ、関連記事を読んでいくと、時事が素晴らしかったというより、他社は何をしていたの、という疑問がわいてきます。

朝日の1面記事(朝日のオリジナル)は、以下のように説明しています。

〈外務省によれば、2月22日に現地テレビで容疑者逮捕の報道予告があったため、同日中にイラク当局に事実関係を問い合わせた〉

また、読売のカイロ特派員の記事は、次のように書いています。

〈(在イラク日本)大使館によると、地元テレビが2月22日に放映した番組に、香田さん拉致に関わったとみられる男が出演し、その際、香田さん事件に関する供述を近く行うとの字幕が流れた〉

どうやら、現地では22日の時点ですでに、日本人殺害の容疑者が逮捕されたらしいことは、公共の電波を通して公にされていたようなのです。この放送を見ていた人も少なからずいるでしょうから、現地ではそれなりに話題になっていたことも考えられます。

こうしたことを、日本の外務省はすぐにキャッチしたようですが、日本の報道機関はというと、しばらく気づかなかったと思われます。もし気づいていたら、現地の報道を引用するかたちで、すぐに記事にしていたでしょう。

気づかなかったのは、外務省がイラク国内に日本人職員を常駐させているのに対し、ほとんどの報道機関は日本人スタッフを現地に派遣していない、というのが大きな原因だと思います。

身の危険を冒してまで日本の報道機関がイラクで情報収集する必要はない、国や外国報道機関から情報を取ればいい、という考えもあると思います。現地ではやや古くなったニュースでも、うまく扱えば日本国内では他社を出し抜くぐらいのことはでき、そこそこの満足感は味わえるわけだから、あえて危険地帯に足を踏み入れることはない、という発想も成り立つかもしれません。

読者として新聞社に「イラクでもちゃんと仕事をしてよ」と注文をつけるのは簡単です。ただ、多くの記者が現地で命を落としていることを考えると、新聞社としてスタッフの配置をためらうのはわかるような気がします。

しかしそれでも、今回のように、現地でテレビ放映されている内容について、日本の外務省は承知しているのに、新聞をはじめとする報道機関はそれについてしばらく気がつかなかったというのは、非常に望ましくない状態だと思います。読者の知る権利に応えるためにも、イラク関連の報道に関しては、新聞は何らかの対策が必要なように思います。
[PR]
by tmreij | 2006-03-02 23:56 | 本紙


<< 高野連が説教するのはヘンだ 永田議員の「病院避難」は、いいの? >>