タンチョウ増やしたのは、ご近所の2人?

国の天然記念物タンチョウの北海道内の生息数が、調査開始以来初めて千羽を超えたようです。きょう(2006年2月23日)の北海道新聞朝刊は、この話題を、1面(カラー写真つき)と社会面で報じています。

記事によると、千羽というのは、絶滅の危機から抜け出た目安になる数字だそうです。〈調査を始めた一九五二年は三十三羽で絶滅の危機にあった〉とのことですから、たまたま同じ時代に地球に生きる他の種(ヒト)にとっても、とても喜ばしいニュースだといえるでしょう。この日の道新も、〈関係者に喜びが広がっている〉と書くなど、嬉しさが伝わってくる紙面になっています。

基本的には、喜怒哀楽が感じ取れる記事というのはいいと思います。ただ今回は、ちょっと冷静さに欠けているところもあるような気がします。

今回のニュースで読者が気になることのひとつに、なぜタンチョウの数が増えたのだろうか、ということがあると思います。この点について1面記事は、〈地道な給餌活動などで数を増やしてきた〉と説明していますので、とりあえずは、なるほどね、食べ物がカギだったわけですか、とざっくりと納得することができます。

ただ、具体的にはどういった人や団体がどんな活動をしてきたのか、それによってどんな効果があったのかといった点は、1面ではわかりません。

それを補う意図もあるのかと思いますが、社会面の記事〈タンチョウと半生 給餌続ける男女〉は、繁殖に重要なエサやりを長年続けてきた2人を写真つきで紹介しています。1人は釧路管内鶴居村の85歳の女性で、〈四十年間、毎日朝と昼、給餌をしている。バケツでトウモロコシを運ぶが、深い雪に体ごと埋まることも〉あるとし、もう1人の釧路市阿寒町の75歳の男性については、父親の後を継いで三十三年前から自宅近くでエサをやり続けてきたと伝えています。

これを読むと、タンチョウにせっせと食べ物を与え続け、繁殖に貢献してきたのは、どうやら生息地のご近所さんらしいことがわかります。これら一般人の他に、専門家など公的なスタッフもエサを与えていたのかもしれませんが、この日の紙面からはわかりません。1面と社会面の記事を読んだ限りでは、生息地の近所のおばさん、おじさんが、絶滅の危機からタンチョウを救ったような印象を受けるのです。

もしそうなのであれば、天然記念物に指定しておきながら、国としてそんなのでいいの? という気がしてきますし、新聞としては、そういう視点も必要かと思います。そうではなく、公的な施設やスタッフを中心とし、系統だった繁殖活動をしてきたのであれば、そちらについても、ある程度は説明があってもいいように思います。

この日のニュースは、タンチョウが増えた! ということなのですから、どうして増えたのかというデータは欠かせないはずです。〈地道な給餌活動など〉というわずかな説明と、熱心にエサやりをしてきたおばさんとおじさん1人ずつの紹介だけでは、読者は繁殖の理由があまりよくわからないのではないでしょうか(もしかしたら北海道民にとっては常識なので、説明の必要がないのかもしれませんが)。

喜ばしい話題を新聞も一緒になって喜び、情緒的な苦労話を添えてムードを盛り上げるのはいいと思います。ただ、それだけでは、ちとまずくはないでしょうか。嬉しいニュースに対しても、どこかで冷めた目を持ち続け、読者に何を伝えるべきかを常に意識することが、新聞にとっては大事なように思います。
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by tmreij | 2006-02-24 00:15 | 津々浦々


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