新聞の「業界エゴ」臭が強くないか

きょう(2006年2月20日)の読売新聞朝刊は、新聞の「特殊指定」の継続を訴える記事を、1面、2面、社説、解説面で大展開しています。

主張の中身をみると、〈活字文化の維持・振興に欠かせぬ〉(社説見出し)、〈憲法が定めた「知る権利」が損なわれることにもなりかねない〉(解説面記事)など、美しい理屈が出てきます。それはそれでいいと思うのですが、全体を通して読むと、なんとなく不誠実な感じがしてきます。

新聞の特殊指定というのは、地域や読者によって新聞の値段をばらばらにすることを禁じる制度です。

新聞社側は、もしこの特殊指定がなくなれば、販売店が割引競争に走るか、逆に〈人口が少なく配達コストがかかる山間部、過疎地などでは、購読料金の値上げや配達打ち切りといった動きが出てくるのは必至だ〉(解説面記事)と訴えています。そして、〈販売店を過当な競争に巻き込んだ結果、サービス向上どころか、国民、読者の利益を損ねてしまっては本末転倒だ〉(同)と憂えています。

ところで、読売はなぜきょう、この問題を大きく取り上げたのでしょうか。ひとつには、公正取引委員会が最近、特殊指定の見直し作業を始めたということがあるでしょう。ただ、より大きな理由として、この問題をテーマにした世論調査を読売が1週間ほど前に実施し、同社の主張に沿う結果が出たということがあると思います。

紙面によると、世論調査の質問は6つ。うちひとつでは、特殊指定について説明したうえで、〈あなたは、この公正取引委員会の(特殊指定)制度を、続ける方がよいと思いますか、そうは思いませんか〉と質問しています。回答は、〈続ける方がよい 69.0%〉〈どちらかといえば続ける方がよい 14.9%〉〈どちらかといえばそうは思わない 5.7%〉〈そうは思わない 4.9%〉〈答えない 5.5%〉となっています。

さらに別の質問には、〈新聞にとって、あなたがとくに重要だと思うものを、次の中から、1つだけあげて下さい〉というのがあり、答えは、〈記事の内容の良さ 81.9%〉〈読者へのサービスの良さ 8.9%〉〈値段の安さ 6.2%〉〈その他 0.3%〉〈答えない 2.7%〉となっています。

こうした結果をもって読売は、ほらほら、多くの国民は特殊指定を続けたほうがいいと思っているし、値段の安さはそんなに大事なことだとは思っていないんだから、指定をやめようなどという考えは改めなさい、と主張しているわけです。

でも、これってなんか、すっきりとはつじつまが合っていないような気がします。

上記のとおり、新聞社が特殊指定の撤廃に反対する大きな理由は、撤廃すれば必ず、販売店で安売り競争が起こると予測しているからです。しかし、〈多くの国民は、新聞に対して価格やサービス面での競争よりも、紙面の内容での競争を求めているようだ〉(1面)と書いているとおり、今回の世論調査では、「値段の安さ」は多くの人にとって優先事項ではないとの結果が出ています。ということは、価格の低さよりも内容の良さで新聞は選ばれるはずですから、仮に安売り競争が起こったとしても、新聞の売れ行きには大きな影響は出ないでしょうし、「知る権利」のダメージも少ないということにならないでしょうか。

なんだかヘン、と思うのは、それだけではありません。次の、解説面記事の記述もです。

〈(この冬、4メートルを超える記録的積雪に見舞われた新潟県津南町)では、家が散在しているため、宅配にはコストがかかる。「もし、定価が守られなくなったら?」。そんな問いかけに、センター所長の津端茂雄さん(65)は「戸別配達をやっていけなくなりますよ」と、即座に答えた〉

新聞の定価が守られなくなることと、戸別配達が続かなくなることに、かなりの飛躍がないでしょうか。定価が守られなくなると、どういうことが起こり、どういう事情から戸別配達が無くなるのか、ていねいに説明すべきところですが、一気に読者に「戸別配達はムリ」という印象を植えつけようとしています。こんなことをするのは、具体的には言いづらいことがあるか、論理的には説明できないからではないか、という気がしてきます。

今回の特殊指定については勉強不足ですので、ここで何らかの意見を表明することはしません。ただ、今回のようなすっきり理屈が通っていない記事を読んでいると、自分たちに都合のいいデータや読者の耳触りがいい論理だけを強調し、何とかして既得権益を守ろうとする「業界エゴ」のような印象を受けます。

新聞は、特殊指定を継続せよと主張するのであれば、値段がまちまちになったらなぜだめなのか、特殊指定が無くても新聞社側の努力で戸別配達を続けられないのか、国民にメリットはないのか、ついでに現在の朝日・毎日・読売の値段がまったく同じなのはどうしてなのか、といったことについて、読者に誠実に、矛盾なく説明すべきだと思います。
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by tmreij | 2006-02-21 00:36 | 本紙


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