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「内輪の論理」から早く抜け出て

朝日新聞は、「紙面審議会」という会合を年に数回もっています。社外の数人に紙面についてあれこれ意見を言ってもらい、編集幹部が説明するといった場のようです。きょう(2006年2月3日)の朝日新聞朝刊は、オピニオン面1ページを使って、1月に開いた審議会の様子を伝えています。

「委員」という肩書きがつけられたご意見番は計4人。日本国際交流センター理事、政策研究大学院大学教授、美術作家に加え、伊藤忠商事会長の丹羽宇一郎氏がいます。この丹羽氏が鋭い意見を述べているので、紹介します。

〈丹羽委員 10月20日に普天間基地移転に関して「アメリカは沿岸案を拒否」との記事が載った直後、日米交渉で米国は沿岸案を受け入れた。書いた時点では事実でも結果的に違った時に、どう対処するのか、新聞として考えておく必要がある〉

〈西村陽一・政治部長 記事を掲載した時点では米国の交渉方針に間違いはなかった。実際、米側はいったんは拒否している。しかし、日米交渉はその後、非常に複雑な展開をたどり、米国の折衷案、日本の修正沿岸案の提案など、二転、三転、四転している。その経緯と背景については、その後の雑報と2度にわたるかなり詳細な検証記事で報じている〉

〈丹羽委員 見出しだけしか読まない読者も多く、関係者や専門家でなければ、長大な検証記事はなかなか読まない。「内輪の論理」を脱し、読者の目線に立った対応が必要だ〉

〈武内健二・編集局長 (前略)結果的に間違ったとき、どうフォローすべきかについては、これからも工夫していきたい〉

こういうやりとりがあったことを隠さず伝えている点で、朝日は良心的だといえると思います。ただこれが、読者のガス抜きだけを目的としているとしたら、逆にかなり悪質です。

過程がどうであろうと、結果として誤報となったときに、読者に率直に「間違えました」とわかりやすく表明することが新聞には求められています。技術的には、そんなに難しいことではないはずです。問題は、メンツとかプライドとかいったものがからんだ心理的な抵抗感でしょう。しかし、そんなものは早く飛び越えてしまうべきです。間違っても、「ミスを認めたら読者の信用を損なう」といった読者をバカにした理屈を持ち出すべきではありません。

朝日には、〈これからも工夫していきたい〉という官僚の答弁のような発言で終わりにせず、丹羽氏が要求するよう、早期に〈「内輪の論理」を脱し〉てほしいと思います。
by tmreij | 2006-02-04 00:51 | 本紙


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