ライブドアの「実質支配」ってなに?

ライブドアをめぐる報道合戦が続いています。きょう(2006年1月20日)の全国紙各紙も、朝夕刊とも、1面や社会面などにライブドア関連の記事を大きく掲載しています。

金や株の流れをチャートで示すなど、ライブドアの「手口」について読者にわかりやすく伝えようと、各紙が努力しています。それでも何回読んでもよくわからない点も少なくありませんが、事件がそれだけ複雑だということなのでしょう(理解力の問題ということもあると思いますが)。

ただ、よくわからない原因のひとつとして、大事な点が大事に扱われていないということがあるように思います。

今回、ライブドア本社などに家宅捜索があったのは、ライブドアの関連会社(ライブドアマーケティング)が、証券取引法に違反した疑いがあるからです。

この関連会社は、04年10月に出版社を買収したのですが、その売買は直接2社間でされたものではありませんでした。当時、出版社は、ファンド(投資事業組合)の所有だったからです。そこで関連会社は、ファンドから出版社を買いました(株式交換)。ただ、対外的には、関連会社は出版社を買収したとだけ発表しました。

これが問題となったのは、売り主であるファンドが、実はライブドアと一心同体だと、検察が判断したからです。検察側から説明を受けた各紙は、このライブドアとファンドの関係を、「実質支配」「事実上一体」などの言葉で表現。そして、「ライブドアの関連会社は、実施的にライブドアの持ち物(出版社)を買っただけなのに、いかにも無関係の会社を新規購入したかのような虚偽の発表をした」といった、検察側の見立てを伝えてきました。

気になるのは、この「実質支配」というやつです。本件の容疑は、ライブドア関連会社とファンドに「実質支配」という関係があるから成り立つはずですし、逆に「実質支配」がなければ崩れるようにも思います。それぐらい大事なキーワードだと思うのですが、「実質支配」とは正確にはどういう状態を指していて、どういう根拠に基づいてそう言えるのかが、各紙の記事からはよくわからないのです。

きょうの読売朝刊の社会面記事は、エイチ・エス証券という会社がファンドについて、〈ライブドアの意向を受け、設立・運営していたことを明らかにした〉と書いています。こういう記述を読むと、かなり大ざっぱな説明ながら、なるほど「実質支配」の状態にあったのだろうと理解できます。

しかし、上の記述は続きがあり、〈(ファンドは)04年8月には、ライブドア関連の出資金を全額返還しており、「通常の商取引の範囲内で違法性はない」などと述べた〉となっています。問題となっているライブドア関連会社による出版社の買収があった04年10月には、ファンドにはライブドア本体の出資はなかったというわけです。

出資していないのに「実質支配」しているというのは、どういうときにいえるのでしょうか。きっといろいろな場合があるのでしょうが、それがどんな状態を指すのか、一連の報道からは、よくみえてきません。つまり、「実質支配」していると記事に書いてあっても、その言葉に現実味がないのです。

きょうの産経朝刊の1面記事は、ライブドアが〈「株を取得した投資事業組合(ファンド)はライブドアのグループ企業が(直接的に)出資しておらず、連結決算に入れるのは妥当ではないと判断した」〉と説明し、〈「ライブドアと一体である投資組合が買収済みだったのに、事実を公表しなかった」と報道されたことに対する反論〉をしたと報じています。ライブドアは、「実質支配」という見解に異議を唱え、違法行為はなかったと主張しているわけで、このことからも、「実質支配」がポイントであることがわかります。

新聞は、検察リークを主な情報源として、ライブドア本体の粉飾や不正な金の流れなど、本件容疑から離れた疑惑を次々と打ち上げているような感じがします。そうした報道には、一定の意義を認めますが、危険性も感じます。

まずは、強制捜査につながった本件容疑において、カギを握る(と思われる)「実質支配」が何を指しているのかを検証し、読者にわかりやすく伝えることが大事なように思います。
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by tmreij | 2006-01-20 23:59 | 本紙


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