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誤発注に乗じたのか、不作為だったのか

みずほ証券が株を誤発注し、それを他の証券会社が大量に買って大きな利益を得ました。きょう(2005年12月15日)の全国紙朝刊は、複数の証券会社がその利益の返還を検討していると、1面や経済面などで報じています。

この騒動をめぐっては、朝日が書いているとおり、与謝野経済財政・金融担当相が〈「誤発注と認識しながら、その間隙をぬって株を取得するというのは美しい話ではない」〉と、利益を得た証券会社を非難しています。一国会議員ではなく所管の大臣がこう言っているわけですから、政府としてそう認識しているわけです。

これはかなり強烈なことです。一国の政府が大手証券会社に向かって、「美しい話ではない=汚い」ことをしていると非難しているわけで、そうそうあることではありません。後ろ指を指された企業は、信用を大きく損ないますし、もし批判が不当であれば、名誉棄損で国を訴えることも辞さないでしょう。

そんな注目すべきクレームなのに、どの新聞も、果たして証券会社が〈「誤発注と認識しながら、その間隙をぬって株を取得」〉したのかどうかについては、さほど熱心には掘り下げていません。

今回の株取引や利益返還に関する証券会社側のコメントをきょうの新聞で探してみると——▽リーマン・ブラザーズ証券〈「単純なミスに乗じて、利益を得るべきではないと考えている」〉(朝日)、〈「誤発注に乗じて利益を得るのは本意ではない」〉(読売)▽日興コーディアルグループ〈「当社の利益にするつもりはなく、市場の信頼回復に役立たせたい」〉(朝日)——ぐらいしか見当たりません。

これから判断すると、リーマンは誤発注に乗じたらしいことはわかります。しかし、日興コーディアルを含め、他に大量取得した社(UBS証券グループ、モルガン・スタンレー、クレディ・スイス、野村証券)については、自民党が〈「火事場泥棒」〉(毎日、読売)と呼ぶようなことをしたのかどうなのか、不明です。

朝日は、〈「急激な売り注文が出た銘柄などを自動検知するシステムがあり、ディーラーは誤発注の事情を知らないで買い注文を出した」〉という企業側のコメントを載せていますが、誰が言ったのかについては〈金融機関〉とぼかしています。これでは、責任あるコメントとは言えませんし、どこの社の発言なのかがわからなければ、あまり読者のためになる情報とも言えないでしょう。

今回の誤発注に端を発した株の大量取得と、その後の現金決済による大もうけについては、多くの人々が「証券会社ってヒドくない?」という感想をもっているように思います。違法行為ではありませんし、ミスをしたのはみずほ証券や東京証券取引所ですから、そちらの責任や対応を報じるのはもちろん大事でしょう。しかし、ボロ儲けした大手証券会社がどんなつもりで商売しているのかということも、読者にとっては重要な情報のはずで、新聞はそこもしっかり伝えてほしいと思います。
by tmreij | 2005-12-15 23:39 | 本紙


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