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製薬会社の宣伝部隊か

飲む発毛薬「プロペシア」が、日本で発売されることになりました。きょう(2005年12月14日)の全国紙朝刊は、目立つ扱いでこれを報じています。

なんでも、発毛剤としては世界で唯一の飲み薬(医療用医薬品)とのこと。朝日の経済面記事によると、万有製薬(発売元)は〈「(薄毛と思っている日本人男性は)欧米に比べ非常に多く、日本の市場は世界最大では」〉と話しているそうです。こうしたことから、今回の発売を新聞がニュースとして取り上げること自体は、自然なことだと思います。

問題は、その報じ方です。

読売の社会面記事〈世界唯一 飲む発毛剤 きょう発売〉〈毎日1錠 月7500円〉は、〈脱毛を促す男性ホルモンをつくる酵素の働きを防ぐ〉〈世界60カ国以上で年間約300億円の販売実績がある〉〈1錠250円(参考価格)で、毎日1錠ずつ服用〉といったデータを列挙。〈発表会では、国内の男性を対象に臨床試験を行った東京女子医大の川島真教授が「副作用も少なく、58%の患者の髪の毛が増えるなど、効果が確認された」と報告した〉という文章で結んでいます。

社会面記事なのに、社会的な位置づけや、批判精神といったものはまったく見当たりません。もう、ほとんど広告です。

新聞に、新発売の医薬品について紹介する記事があってもいいでしょう。しかし、製薬会社の発表をただまとめるだけでは、新聞として機能しているとは言えません(製薬会社は大喜びでしょうけど)。読者にしてみれば、それでなくても多くの広告を見せつけられているのに、記事の部分でまたさらに宣伝を読まされるようなものです。

副作用の無い薬は無いといわれていますが、この読売の記事で副作用について触れているのは、上記の〈「副作用も少なく……」〉というコメントだけ。しかも、記事から判断すると、このコメントをした医大教授は、製薬会社から依頼を受けた人物のようなのです。信用度に問題ありといえるでしょうが、百歩譲って、この教授の言うことを額面どおりに受け止めたとしても、副作用は少ないながらもあるわけですから、その副作用についてしっかり取材し、きっちり書くのが読者サービスというものでしょう。

その点、朝日の記事は、〈1年間の臨床試験で58%の被験者で髪の毛が増えた一方、性機能障害などの副作用が5%の人に出た〉と、わずかではありますが、副作用について具体的に触れています。医薬品の紹介記事では、欠かせないデータでしょう。また、記事全体としても、単に商品を紹介するのではなく、「リアップ」以降は苦戦しているという発毛剤業界の現状とからめてまとめている点で、評価できます。

読売は、製薬会社を喜ばせようと思って今回の記事を書いたわけではないでしょう。もちろん、そんな気づかいはすべきではありませんが、有益な情報で読者を喜ばせようという意識は、ぜひとももってもらいたいと思います。
by tmreij | 2005-12-14 22:53 | 本紙


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